ちどりあしHSP

ステータス低いスライムと化しているHSP気質の日常

さびれた遊具のパンダに似てた。

あれは15年ほど前になるだろうか。

「お金を貸してほしいんだけど」
やわらかい声音で、わたしより20歳は年上だった元同僚女性が言った。

当時のわたしは事故で廃車になった車と新しい車のダブルローンで支払いが大変な時期なのに仕事を辞め、次の職場で働きだしたときだったと思う。

人に貸せるお金があるはずもない。

しかし断れない性格だったわたし。

「いくらですか?」
「いくらでもいいよ」
なにを言っているのだろう?
「……給料日前だし、5千円くらいしか貸せないですよ」
「それでもいいよ」

釈然としないまま貸した。
その後も数回、いくらでもいいよという借金の打診があり、いずれも戻ってきたけど、金額をこちらに委ねる借金の気味悪さをいまも時々思い出す。

彼女とは付き合いを絶ったので真相はわからないが、生活費の不足しそうな部分を補うためのものだったのだろうかと推測している。


彼女はいわゆる恋愛体質で、彼氏を切らしたことがないという女性だった。

わたしの父親が他界したあと、夏が始まる前に会った。彼女は心配しているように見えた。
「お母さんどう?」
ああ、まあやっぱり元気はないですよ。
「若いんだから。まだまだこれから」
……そうですね。だといいですけど。
「先を越されるかもよ」
え?なにが?
「彼氏ができたって、そのうち言うかも」
彼女は少し笑っていた。
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父親亡くなって3ヶ月経ってないんですけど?
あのときは、比喩なんかじゃなく血の気がひいた。


彼女がどういう気持ちで言ったのかなんて、本心はわからない。


人斬り侍のようにバサバサと人間関係を切り捨ててきているわたしに言えたことじゃないが、人を大事にして大事にされるという人間関係を築きたい。


人の痛みを想像しよう。
夏になると彼女とのやり取りを思い出しては、自分に言い聞かせるのだ。